第九十九回芥川賞受賞作。<br />「ある日、気がつくと、自分の内部に昔はたしかにあった筈の主体としての<われ>が失われていたのだ。<br />わが心のうちなる岡にのぼって、いくら自分の名を呼んでみても、いたずらにただ山彦がかえってくるばかり。<br /><われ>に置き去りにされて抜け殻になった<われ>のがらんどうの中を、うそ寒い風が通り過ぎて行くばかり。<br />そうは思いませんか。<br />小説‘尋ね人の時間’とは、自分捜しの物語なのかもしれない」(あとがきより)