長門守(ながとのかみ)・酒井忠重が、藩主の世子を廃し、自分の子を後継に据えようとしている──荘内藩空前の危機、いわゆる「長門守事件」を題材とした表題作。<br />権謀術数がうずまく政治の世界に生きる男たちを描くこの作品とは対照的に、小藩の武士の世界をその妻の視点からユーモラスに描いた「夢ぞ見し」。<br />ほそぼそと街場に暮らす人々の哀歓を愛情深く描く「春の雪」「夕べの光」「遠い少女」。<br />藤沢周平の魅力を堪能できる、5つの初期短篇。<br />