おゆきさん──あと数年で還暦をむかえる私は生真面目な朴念仁で通してきたが、年甲斐もなく‘深間’にはまった粋な女性と、ついに再婚の決意をした。<br />同じ日に、なんと八十に手の届く義父と私の長男も結婚すると宣言した。<br />あわてて、おゆきさんを訪ねて私の見たものは……男女の心の綾を描き出す表題作ほか、変幻自在の発想で描く「小夜時雨(たぬき)」「鷺娘」「蚊帳の外」「行きずり」「戻橋」「無口な女」の全7篇を収録した、しみじみした味わいの珠玉SF短篇集。<br />