娘ざかりを剣の道に生きた以登(いと)。<br />色白で細面、醜女ではないのだが父に似て口がいささか大きすぎる。<br />そんなお以登にも、ほのかに想いをよせる男がいた。<br />部屋住みだが道場随一の遣い手、江口孫四郎である。<br />許婚の決まった身ながら、お以登は一度だけ孫四郎との手合わせを望む──。<br />老女の昔語りとして端正に描かれる異色の武家物語は、北川景子主演の映画化原作。<br />表題作ほか、藤沢周平の円熟期の秀作を‘町人物’と‘武家物’併せて七篇収録。<br />