「母が首を吊ったのを見つけた時、ぼくが、まだ五歳だったのは幸せなことだ。<br />十歳だったら泣きわめいていただろうし、十五歳だったら心の病気にかかってた。<br />今だったらどうだろう。<br />きっと笑ってた。<br />二十歳。<br />もう、ぼくは、人が、おかしくなくても笑うということを知っている」(本文より)。<br />人が人を求める気持ち、コトバにできない寂しさを描いた短篇集。<br />人を愛することで初めてうまれる恐怖、そんな‘聖なる残酷’に彩られた、忘れがたい物語。<br />