‘家を建てる’が口癖だった父は、理想の家族を夢みて、払える金もないのに、いきなり立派な家を建てた。<br />しかし成人した娘たちも、16年前に家を出た妻も、その家に寄りつかない。<br />そこで父はホームレス一家を家に招き、ニセモノ家族と一緒に暮らし始めるのだが……不気味な味わいの表題作は、泉鏡花文学賞を受賞。<br />ほかに、不倫する女が体験する、不倫相手の妻の奇矯なふるまいを通して、家族の不在をコミカルにえがく「もやし」を収録。<br />才気あふれる2短篇。<br />