この作家自身の郷里・紀州の小都市を舞台に、のがれがたい血のしがらみに閉じ込められた青年の、癒せぬ渇望、愛と憎しみ、生命の模索を鮮烈な文体でえがいて圧倒的な評価を得た芥川賞受賞作。<br />この小説は、著者独自の哀切な主題旋律を初めて文学として定着させた記念碑的作品として、広く感動を呼んだ。<br />『枯木灘』『地の果て 至上の時』と展開して中上世界の最高峰をなす三部作の第一章に当たる。<br />表題作の他、初期の力作「黄金比の朝」「火宅」「浄徳寺ツアー」の三篇を収める。<br />