藩主の用人にまで昇進した後、家督を譲って隠居した三屋清左衛門は、思いがけず寂しさを感じた。<br />しかしその日記にしるされる生活は、退屈でも平穏でもない。<br />自由な身ならでは、清左衛門はさまざまな相談をもちかけられる。<br />先代の殿が一度だけお手つきにした女の縁結び、お城の前で切腹した男の動機しらべなどに尽力するうち、藩のなまぐさい派閥争いに巻き込まれ、夫の浮気を訴えるわが娘をなだめ……老いゆく日々のかがやきを、見事な筆で描く傑作長篇小説!