「お助けくださいまし」と夜道を走ってきた女をかばい、片桐敬助は、抜き身の刀をもった男を斬った。<br />かわせば女が斬られ、受ければ自身が手傷を負ったにちがいない。<br />しかしその男は、藩内随一、とうたわれる剣の遣い手・弓削新次郎の父だった……。<br />片桐と弓削、男の闘いの一部始終を、緊密な構成・乾いた抒情で描きだす表題作のほか、「三ノ丸広場下城どき」「山姥橋夜五ツ」「榎屋敷宵の春月」と円熟期の名品を収録。<br />時代小説の味わいを堪能できる贅沢な1冊!