ある日、入院先でふとすれ違った人に懐かしい匂いを感じた。<br />あれは亡き夫の体から立ちのぼる、忘れがたい独特な香り。<br />なぜ他人の体から同じ香りが…表題作。<br />夫の不義理から、失望のあまりアルコールにおぼれ醜態を晒す母。<br />そんな母にも譲れないプライドがあったことを、一人息子が知り…「しぐれ屋の歴史」。<br />男と女、母と子、人それぞれの愛憎と喜び、哀しみを陰翳深く描く。<br />長篇作家のイメージが強い著者が20年間に書いた36本の短篇のうち、珠玉の7篇を収録。<br />