立派な板木師になろうと、裏長屋でつましく暮らす清次とおたみ。<br />道を踏み外した兄や先輩のように自分はならないと心に誓って…それでも奈落の底に墜ちてゆく、厳しい宿命を描いた表題作。<br />十四年に及んだ隠密探索を終えて江戸にもどった男が、己の探索の内容にふと疑いを持つ「相模守は無害」。<br />呑気な青年が、思いもかけぬ運命で許嫁を失ったとき…「紅の記憶」。<br />そのほか「入墨」「父(ちゃん)と呼べ」の全五篇。<br />四十代半ばの藤沢周平が描く、味わい深い短篇集。<br />