35歳の季理子は、中学生のころ夢で嗅いだ‘男のにおい’が未だに忘れられない。<br />それはどこか懐かしい、いくつものにおいが混ざり合った複雑なハーモニーだった。<br />年を重ね、デートの誘いも減ってきたある日、海外紛争地帯に長期取材に赴く元同僚の壮行会のため、友人たちと集まった。<br />あ、この男の香りは、あの夢のにすごく似ている……けれど、100%同じではない……。<br />これは「忘れられない香り」の記憶をテーマとして競作されたアンソロジーの一篇です。<br />