越後の国を出て十六年、江戸の町で父の仇敵を探し続ける浪人・堀辰蔵。<br />飢えて疲れきった辰蔵はある日ささいなことで逆上し、見知らぬ煙管師の頸すじに斬りつけてしまう。<br />父と仲良くふたり暮しだった煙管師の娘・お道は、これで天涯孤独の身となった。<br />近隣の人々に見守られ、気丈に生きていくお道と、仇討ち転じて闇の世界の仕掛人となった辰蔵の凄絶な半生。<br />折にふれ、奇妙にもつれ合うお道と辰蔵の運命を、池波正太郎が円熟の筆で描いた名作。<br />