黒船が来航したその年。<br />喜平次はわけあって素性を隠し、渡良瀬川のほとりで渡し船の船頭となっていた。<br />村人たちに頼られる存在となりつつあった喜平次だが、一体彼の目的――背負わされた宿命とは何なのか。<br />舞台は幕末でも、「シミタツ節」と呼ばれたリリシズムと格調高い文体は健在。<br />時代の転換期、武士としての誇りを失いかけた男が、己の進むべき道を見極める姿を描く、傑作時代長篇。<br />