私は腐野花(くさりの・はな)。<br />着慣れない安いスーツを身に纏ってもどこか優雅で惨めで、落ちぶれた貴族のようなこの男の名は淳悟(じゅんご)。<br />私の男、そして私の養父だ。<br />突然、孤児となった十歳の私を、二十五歳の淳悟が引き取り、海のみえる小さな街で私たちは親子となった。<br />物語は、アルバムを逆からめくるように、花の結婚から二人の過去へと遡ってゆく。<br />空虚を抱え、愛に飢えた親子が冒した禁忌、許されない愛と性の日々を、圧倒的な筆力で描く直木賞受賞作。<br />