伊吹マリ、松永てるほなど、今はなき日劇ミュージックホールの踊り子たち、「箏曲教授」の札を掲げた娼家とその女たちとのまじわり、年に一度かつての客から香水を贈られる元娼婦の心情、赤線廃止後の向島「鳩の町」の思い出、無残にも伐られてしまった銀座の柳並木と露店の消滅、浅草や新宿にあったスポーツランド……。<br />坂を愛し、雑踏を愛し、都会を愛した作家の眼がとらえた昭和30、40年代の東京。<br />その懐かしい風景の数々を垣間見ることができるアンソロジー。<br />