堪えがたいほどの空腹を覚えたある晩、彼女は断言した。<br />「もう一度パン屋を襲うのよ」。<br />それ以外に、学生時代にパン屋を襲撃して以来、僕にかけられた呪いをとく方法はない。<br />かくして妻と僕は中古のカローラで、午前2時半の東京の街へ繰り出した……。<br />表題作のほか「象の消滅」、‘ねじまき鳥’の原型となった作品など、初期の傑作6篇を収録した短編集。<br />