ここ数年、惑いに流されていた北町貫多に東京タワーの灯が凶暴な輝きを放つ。<br />その場所は、師・藤澤清造の終焉地であった――。<br />「闇に目をこらすと、そこには狂える藤澤清造の、最後の彷徨の残像が揺曳しているような錯覚があった。<br />――その朧な残像を追って、貫多は二十九歳から今日までの生を経(た)ててきたはずであったのだ。<br />」(本文より)何の為に私小説を書くのか。<br />鬼気迫る四作品を収録。<br />