ムーンナイト・ダイバー
禁断の海へ、被災者の遺品を捜して潜る男。
なぜ潜る? 聖域かもしれないのに、禁を侵せば、罰せられるかもしれないのに――。
地形に救われ津波の被害から奇跡的に残された漁港へ近づいてゆく一台の軽トラック。
そこには福島の禁じられた海に潜り、短い限定された時間で遺物を確保して戻ってくる一人のダイバーが乗っていた。
ダイバーの名は瀬奈舟作。
彼もあの日、故郷の町を声がかすれるまで叫びながら、突然目の前から消えた大切な人を探しつづけた、そういう者のひとりだ。
舟作は原発を照らす強烈な光のエリアをこえ、月の光だけを頼りにこの海に潜る。
福島の遺族がつくる小さな「会」に依頼され、入ることのできない場所に残された家族の遺品を探すのだ。
海にはゲートもなく、警備員もいない。
だが、もし海上保安庁に取り調べをうけることになっても独断でしたこととする――公にはできない仕事だった。
東日本大震災から5年、いまだ生々しい傷を抱えた人々の心にある絶望と希望の葛藤を描いた著者の新たな代表作!
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