叶わぬ恋こそ、うつくしい――能の演目に材をとり、繊細なまでに張りつめた愛の悲しみをとらえる作品集。<br />雨の気配を滲ませた母子に宿命的に惹かれ、人生設計を投げ捨てたエリート医師(「弱法師」)。<br />編集者の愛を得るために小説を捧げ続けた若き作家(「卒塔婆小町」)。<br />父と母、伯母の不可思議な関係に胸ふるわせる少女(「浮舟」)。<br />能のモチーフをちりばめ、身を滅ぼすほどの激しい恋情が燃えたつ珠玉の3篇。<br />