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帰艦セズ

小樽に上陸した巡洋艦の機関兵は、なぜ戻ってこなかったのか?年月の間で忘れ去られた戦争の傷跡が、綿密な取材でここに甦る。
昭和19年、キスカ撤収作戦で活躍した巡洋艦・阿武隈の機関兵・成瀬時夫は、艦が寄港した小樽で失踪、一年後に山中で死体となって発見された。
戦時中に霞ヶ浦航空隊の整備兵で、米軍のスパイに唆されて脱走した経験を持つ橋爪は、当時の自分と重ね合わせ、成瀬の逃亡の理由を調べ始める――。
傑作長篇戦記小説『逃亡』の副産物でもある表題作「帰艦セズ」ほか、訓練中に沈没した潜水艦の乗組員だった男が、定年退職後に死んだ乗員の遺骨を探しにいく「銀杏のある寺」、上海号事件の当事者の妻を描いた「飛行機雲」の戦記小説3篇と、戦時中に中学生だった男を主人公にした「果物籠」、過去の犯罪や人間の死を扱った現代小説3篇「鋏」「白足袋」「霰ふる」を収録。
吉村文学の真髄に触れる短篇集。
解説・曾根博義




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