戦場のレビヤタン
風が吹いている。
おれは、その風を肌でしっかりと感じながら、レンジローバーの後部座席で揺られている。
英国系の石油プラントを守るため、イラクの紛争地帯に進んで身を投じた武装警備員のKは、キルクークからアルビルへ伸びる国道を北上していた。
荒涼とした紛争地。
戦火はおさまったかに見える地で、わき上がる問いに答えは出ない。
なぜこの地にやってきたのか、戦争とは何か、何が戦争を作り出すのか。
敵は誰なのか。
大義なき戦争、警察国家が撤退した後の世界の風景を淡々と乾いた筆致で描き出す21世紀の戦争文学。
第160回芥川賞候補作。
著者デビュー作「市街戦」を併録。
更新中です。しばらくお待ちください。