海に臨む宿で少女が待つものとは――歴史小説の名手が初めて挑む人情噺。<br />口減らしのため備中の港町・笠岡の「真なべ屋」に連れてこられた志鶴。<br />潮待ち宿のそこでは、商人や仲買人たち、時には怪しい旅人や改革に燃える志士などなど、様々な人々がひっきりなしにやってきては、いずこかへ去っていく。<br />おかみの伊都に支えられ、懸命に働きながら己の人生を見つめる志鶴の成長と、彼女の目を通して幕末から明治にかけての時代を描く連作集。<br />