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パドルの子

中学2年生の水野耕太郎は、唯一の親友だった三輪くんの転校をきっかけに、屋上へ出る階段の踊り場を「別荘」と名づけ、昼休みの時間をひとりで過ごしていた。
夏休みを間近に控えた7月の昼休みのこと。
水野がいつものように別荘で時間を過ごしていると、ザッパーンという大きな音が屋上の方から聞こえてくる。
屋上に出てみると、そこには驚くほど大きな‘水たまり’が広がっていた。
そして、その水たまりで、女子生徒がバタフライで泳いでいる――。
混乱し、立ち尽くす水野の目の前に、水たまりから優雅に上がってきたのは、水泳部のエースで学校一の美少女と名高い、隣のクラスの水原だった。
水原は、水たまりに潜る行為のことを‘パドル’と呼び、「パドルをしながら強く何かを願うと、世界をひとつだけ変えられる」のだと説明する。
半信半疑ながら、誘われるままに水たまりに飛び込んだ水野は、パドルで実際に世界が変わるのを目の当たりにする。
水原がある一つの‘目的’に向かって、パドルを繰り返していることを知る水野。
そしてはからずも、その‘目的’のためのパドルが、思いもかけない衝撃の真実を浮かび上がらせ――。
第六回ポプラ社小説新人賞受賞作!




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