緑と赤
どうして伝わらないのだろう。
こんなに近くにいるのに。
2013年夏、大学三年生の金田知英は、友人と夏休みに海外旅行へ行くため、パスポートを取得した。
自身が在日韓国人であることは知っていたが、「韓国人であること」を意識しないように育てられた知英は、パスポートの色を見て、改めて自分の国籍を意識した。
知英の友人でK-POPが大好きな梓、新大久保のカフェで働く韓国人留学生のジュンミン、ヘイトスピーチに憤り抗議活動に目覚める地方在住の良美、日本に帰化をしたのち韓国で学ぶことを選んだ龍平、そして知英。
自分は「なにじん」なのか、自分の居場所はどこにあるのか、隣にいる人とわかり合えないのはなぜなのか。
ふたつの国で揺れる知英の葛藤と再生を中心に、五人の男女が悩みながらも立ち上がる姿を描く傑作長編。
「馴染まない。
生まれて初めて手にするパスポート。
赤や紺ではない、濃い緑色。
表には、まったく読めないハングル文字。
英語で、REPUBLIC OF KOREAとも書かれている。
ページを開くと、まぎれもない自分の顔がそこにあった」――(本文より)
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