実説 城谷怪談 撰集
1.「事故物件の停電」不動産勤務のベテラン男性、加納さんがまだ入社間もない若い頃に担当した事故物件での出来事。
夏の晴れた日の午後、オーナーからの知らせに急行したアパートにはすでに建物の外にいてもわかるほどの異臭が立ち込めていた。
マスターキーを使って現場と思しき三階の角部屋に立ち入ると、そこには開いたままの窓、揺らめくレースのカーテン、茶の間の横の和室の布団に腐敗の進んだ住人の遺体。
確認のために更に部屋の奥に踏み込んだ時…。
2.「教育隊舎のトイレ」城谷が26歳の時、事情あって陸上自衛隊に奉職することになった。
入隊から半年の教育期間、前期3カ月が間もなく終わろうとしていたある日、勤務中にミスを犯し翌日までに反省文を提出しなければならなくなった。
しかし日中は業務のためその時間が割けない。
消灯、就寝後にこっそりトイレに起きだすふりをして仕上げようと画策したのだが。
深夜、ペンライトと筆記具と用紙を隠し持って、隊舎の奥にあるトイレの個室に入ると、程なく隣の個室から苦しそうな呻き声が聞えてきた。
3.「彼に憑いた生霊」霊感の強いバスガイドのナオちゃんは、二十代の頃のあるツアーを忘れられない。
その日、大型バス二台で北海道の観光地を巡っていた初日の夜、先輩のバスガイドと同部屋で床に就いた直後、当時彼氏と住んでいた札幌市内のアパートに誰かが訪ねてくる夢を見た。
夢の中で玄関を開けると、シャネルの五番が強く香り、黒髪ストレートでショートヘアの見たこともない女性が立っていて「彼を出して」と部屋に上がり込んでくる。
うろたえるナオちゃんを尻目にその女はやがてショルダーバックからアイスピックを取り出して…。
4.「劇場の女の子」城谷がまだ二十代の頃、ある演劇関係の先輩S氏から聞いた体験談。
S氏は北海道で大手照明会社に勤めていた。
若くしてめきめきと頭角を現し、或るとき大きなコンサートの照明チーフに指名される。
劇場は市内でも有数のキャパシティを誇るホールである。
無事にリハーサルも終わり明日は本番という土壇場で大掛かりな変更がかかり残業を余儀なくされてしまう。
ギリギリまで照明チームに手伝ってもらったが、後は一人で大丈夫だと目処を立て、他のメンバーには帰るよう促すと、一人の先輩が「S、キャットウォークで作業するなら気をつけろよ」と呟いて帰って行った。
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