慶応四年二月十五日、フランス水兵と土佐藩兵との間にその事件は起こった。<br />殺されたもの、切腹したもの、死は免れたもの――非運な当事者たちを包みこむ事件の全貌を厳密正確に照らし出そうとする情熱、歴史をみはるかす自由闊達な眼差し……。<br />構想十年、歴史を文学に昇華させる夢を紡いだ偉大な作家の渾身の遺著。<br />