猫がかわいくなかったら
定年まで、あと四年――。
長らく会社の花形部門で働いてきた吉岡だが、ここ数年はデータ管理の閑職についている。
年齢なりに、体調ははっきりと怪しくなってきた。
娘が就職して家を出た今となっては、妻の多恵子と共に静かに老いていくだけの毎日だ。
ところが、近所に住む望月夫妻が二人とも入院したことから、状況が一変。
彼らが飼っている老猫をどうするかを巡って、町内は大騒ぎとなる。
望月夫妻が住むアパートの大家も、警官も救急隊員も生活支援課も、救いの手を差し伸べようとはしない。
ある理由から、この猫を引き取ることができない吉岡と多恵子の選択は……。
誰もが身につまされること間違いなしの、ユーモアと愛情に満ちた人間ドラマ。
【目次】日曜日に (その1)/他生の縁/望月盛衰史/日曜日に (その2)/吉岡家の猫/猫に通う/祇園精舎の鐘の声/里親さがし/最後に見た姿/奇特な人/深き淵より/静かな夜のために
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