「明治三十年代の吉原には江戸浄瑠璃に見るが如き叙事詩的の一面がなお実在していた」。<br />消えゆく遊里の情緒を追い求めた永井荷風の名随筆「里の今昔」。<br />荷風がその「最後の面影」を残すと評した樋口一葉「たけくらべ」、広津柳浪「今戸心中」、泉鏡花「註文帳」の四篇を収録。<br />〈解説〉川本三郎