奈良時代の後期に成立し、短歌・長歌など四五一六首を収める『万葉集』。<br />歴代天皇や皇族、宮廷貴族、律令官僚がおもな作者だ。<br />他方で防人、東国の農民、遊女といった庶民の歌も含む。<br />幅広い階層が詠んだ、きわめて日本的な「国民文学」のイメージで語られるが、それははたして妥当か。<br />古代日本が範を仰いだ中国の詩文の色濃い影響をどう見るべきか。<br />代表的な歌々を紹介・解説しつつ、現存最古の歌集の実像を明らかにする。<br />