僕は傷ついている。<br />その傷に、僕自身でさえさわりたくない――許婚者・美也に裏切られ、一夜にして全てを失った東大生・貫一。<br />愛に絶望し、金の悪鬼となった彼のもとへ突然、資産家との結婚を選んだ美也が舞い戻る。<br />虚無を抱えた二人の再会は、悲劇か、喜劇か。<br />尾崎紅葉『金色夜叉』を平成に甦らせた、橋本治最後の長篇小説。<br />〈解説〉橋爪大三郎