徳川の世は泰平。<br />人びとはどこへでも旅ができる喜びを実感する。<br />旅といえば辛く悲しいという中世以来の意識は劇的に変化し、「楽しい」「面白い」が紀行文の一つの型となり、さらに「いかに実用的か」が求められるようになる。<br />辺境への関心も芽生え、情報量も豊富になっていく。<br />好奇心いっぱいの殿様の旅、国学者のお花見、巡検使同行の蝦夷見聞などを通して、本書は江戸の紀行文の全体像を浮かび上がらせるものである。<br />