「あれえ旦那、また泣いておいでなンですかい」外回りの同心と違い、地味な物書き同心である小田桐左近は、涙もろくて女子が苦手で、ぼやいてばかりの二十六歳。<br />家来の八助やお常婆さんからも、いつも呆れられている。<br />ある日、橋の下に隠れていた男の子を家へ連れ帰ったのだが、話を聞くと悪党の手を逃れてきたという。<br />しかも母親はまだ悪党に掴まっているらしい。<br />放ってはおけない左近は……。<br />江戸のヘタレ男子が、八丁堀をゆく!