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Dear

【本文より抜粋】「だれにも言わないで」と彼女は囁いた。
僕は頷く。
ぞくりと、首筋に鳥肌が立った。
どうしようもなく好きな人が、どうしようもなく好きなだれかの話をしようとしている。
聞きたいのに聞きたくなくて、聞きたくないのに聞きたい。
詩織さんはゆっくりと、やがて溢れたように話し始めた。
【あらすじ】昔から人混みが苦手で、団体行動も駄目。
誰に対しても無関心――。
一見冷徹にも見える浅井静が、唯一気になる人物。
それが、遠野詩織だった。
同じ大学の先輩であり、古書店兼雑貨屋の『時計泥棒』でアルバイト仲間でもある詩織は、いつも物憂げな様子で儚い微笑みを浮かべ、何かあるたびに右指の薬指にはめた指輪に触れていた。
ある夜、詩織に想いを伝えた静は、予期せず、その指輪にまつわる詩織の過去を知ることになる――。




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