藤田伝五は両手をつき、順慶を強く見つめて懇願した。<br />「主人・明智光秀はいま洞ヶ峠にて、筒井さまの軍が合流されるのをお待ちしております」。<br />しかし、順慶はこういい放った。<br />「光秀どのに、善戦を心よりお祈りするとお伝えください」と……。<br />山崎合戦において実質上の勝敗を決した男・筒井順慶。<br />日和見の汚名の下に隠された真のリーダーの素顔を浮き彫りにする書き下ろし歴史小説。<br />