目の前で剽軽な笑顔を見せる木下藤吉郎に、半兵衛は次第に心ひかれていく自分を感じていた。<br />「この男と、もう一度戦場に立ってみるのも悪くはない。<br />あるいは戦火の絶えた世の中が実現できるやもしれぬ」。<br />――名利を求めず、ただ天賦の軍略の才を縦横に駆使して秀吉を勝利に導いた男、竹中半兵衛。<br />名誉よりも人生に美学を求め、三十半ばで夭折した名軍師の生涯を描く長編歴史小説。<br />