懐かしい人びと
勤め先の上司にほのかな恋心を抱いた子持ちの女性。
定年を迎えた日に、別れた妻に花束を届け、感謝の気持ちを伝えた男。
子供たちがいなくなった家で、インコをかすがいに生きる老夫婦――。
さらにボタンを掛け違えてしまった嫁と姑や、孤独ゆえに心を寄せ合う隣人同士など、日常生活の中の何気ない一コマを描いた物語が、渇いた心にしみわたり、忘れていた人生の記憶を呼び覚ます。
切なく、心温まる人間ドラマが満載された本書。
読み進めるうちに、なぜか心の澱みが洗い流されたような気持ちになるのは、著者の端正な筆致ゆえか。
生きることに疲れていても、本書を開くと、いつでもやり直しがきくような気がする。
内海隆一郎の世界は、こんこんと湧く泉のごとく涼やかでありながら、その実、明日へのエネルギーに満ち溢れているのである。
生きていることが、いとおしくなる24篇。
解説は詩人で文芸評論家の安宅夏夫氏。
内海文学の真髄を語り尽くしている。
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