火定
――己のために行なったことはみな、己の命とともに消え失せる。
(中略)わが身のためだけに用いれば、人の命ほど儚く、むなしいものはない。
されどそれを他人のために用いれば、己の生には万金にも値する意味が生じよう。
(本文より抜粋)時は天平――。
藤原氏が設立した施薬院の仕事に、嫌気が差していた若き官人・蜂田名代だったが、高熱が続いた後、突如熱が下がる不思議な病が次々と発生。
それこそが、都を阿鼻叫喚の事態へと陥らせる’疫神(天然痘)’の前兆であった。
我が身を顧みず、治療に当たる医師たち。
しかし混乱に乗じて、病に効くというお札を民に売りつける者も現われて……。
第158回直木賞と第39回吉川英治文学新人賞にWノミネートされた、「天平のパンデミック」を舞台に人間の業を描き切った傑作長編。
解説:安部龍太郎。
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