毛利離反の報に、尼子方に大きな衝撃が走った。<br />経久は怒るのも忘れ、茫然としてため息をついた。<br />「やはり元就という男、ひとすじ縄ではいかぬ奴じゃった。<br />毛利家を継ぐのを、なんとしてでも食いとめるべきであった」――わずか一代で山陰の雄となり、山陰に進出して11ヵ国を領有した尼子経久。<br />傑出した将器と深い人間的魅力で人心をつかみ、毛利と死闘を演じた武将の生涯。<br />