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魔の遺産

ルポライターの野口三吉は、「原爆から八年後の広島」についての文学的報告を執筆するため、その地にやってきた。
そこで彼が目にしたものは、原爆の後遺症とたたかいながら日々を送る人々の、複雑な想いに満ちた生活であった。
’あの日’の記憶、原爆症の現実、戦争に対する感懐、そしてそれを乗り越えて生きようとする意志……。
人類がうみだしてしまった核兵器という’現代の悪魔’の最初の実験場となった都市は、通りすがりの野口に大いなる問題を投げかける。
そして、そんな中で、彼の甥が原爆症の症状を呈し始める……。
本書は、著者の知られざる名作長編小説を、初めて文庫化したものである。
昭和28年の初版刊行以来、一度、著作集に収録された以外は活字化されていない。
阿川弘之ファンにとっては必携必読の作品であるとともに、核問題という人類の重荷を考える上でも、文学史上欠かせないものである。




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