異伝最上義光
1994年に学研の第1回歴史群像大賞を「うつけ信長」で受賞し、その後はノンフィクションで活躍していた著者が、満を持して世に問う歴史小説の再デビュー作品。
尾張の織田信長が頭脳的な作戦を駆使して大軍の今川義元を破り、その名を天下に知らしめた後、甲斐の武田信玄が密かに入京の機会をうかがっていた永禄年間の後期。
表面上は静かに見えた東北地方でも、水面下では覇権争いの動きが加速化しつつあった。
羽前山形の最上宗家。
開祖が斯波兼頼という由緒ある家柄でありながら、いまは米沢の伊達家に首根っこを押さえられ屈辱を味わっている立場。
10代当主義守はお家存続が大事とばかりに伊達家の顔色をうかがっているが、嫡男義光はそんな父の態度に我慢ならず自主独立の炎を内に燃やしていた。
義光の攻撃的な気性に不安を覚えた義守は家督を次男の義時に譲り、伊達家との友好関係を保持しようとする。
伊達家の当主は輝宗。
後に勇名を馳せる梵天丸(政宗)はまだ2歳そこそこの幼子だった。
火花がはじける。
父義守と次男義時が、義光抹殺へと動き始めたそのとき、機が熟したとばかりに義光が起つ。
城から闇夜にまぎれて脱出した義光のもとに、最上家の権威復活を待ち望んで密かに連帯していた者たちが一気に結集する。
義光の幼馴染みで山寺立石寺にて修行中の身だった光源坊(氏家守棟)、義光脱出を手引きした山家兄弟(義治、知治)、最上家と縁の深い五光山宝幢寺の尊海和尚……。
そして、義光決起の時を陰で仕組んでいた黒幕は意外にも……。
歴史的評価が「好」「悪」に二分されて、未だ人物像が定まっていない戦国武将最上義光。
その最上義光の生涯を独自の歴史観と鑑識眼で活写し、新鮮な人物像を描き出す『異伝最上義光』の第1巻「立志編」。
冒頭から主要人物たちが生き生きと躍動する、歴史小説ファン必読の一書。
〈目次〉一 冬眠から醒めた熊二 百丈岩の誓い三 出直しの小僧丸四 上方風の町づくり五 船出の朝六 熊ときつねの戦い七 新時代を開く
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