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躍る古文書?苦い確執?

幼馴染みの2人。
ひとりは日本の最高峰の大学を出て、いまは有名私大の文学部教授、専門が江戸元祿期の松尾芭蕉の研究で知られている小西。
すでにテレビでも馴染みの顔になっている。
もうひとりの浜木は、多様な職業を経験、紆余曲折の末に短大の講師になんとか潜り込んでいる身。
神田の古本屋で偶然に江戸期の古文書を手に入れていた浜木は、3年前、真贋の鑑定をその分野の専門家である小西に依頼。
その際、古文書の扱いをすべて小西に任せる。
なんと、その古文書は掘り出し物で、発見者として解説付きで発表した小西は、それを機に一躍有名になり、そつのない巧みな話術と相まってマスコミの寵児になっている。
2年後、浜木は、戊辰戦争がらみの調査で訪れた会津田島で再び興味深い古文書を手に入れる。
江戸時代初期の勘定奉行伊丹康勝の自筆のものらしい。
浜木は約1年を費やしてその古文書の内容を精査し、得た結論の正否を問うために、いまや売れっ子教授になっている小西と再会する。
当初、あまり興味を示さなかった小西だが、2代将軍秀忠時代の幕府内、幕閣土井利勝と切れ者本多正純の権力闘争に絡む解説、古文書の入手経路と関係する明治維新前後の話などを浜木から聞くうちにその古文書の価値を再認識する。
小西のなかに芽生えてきたのは、3年前と同じようにうだつの上がらない浜木から古文書を安く買い取って自身の名前で大々的に公表すること。
そうすれば、専門分野外での発見とはいえ、小西の学者としての実績と名声は不動のものになる……。
浜木は、2度も同じ手で騙されてしまうほどお人好しの性格なのか。
遠い記憶のなかで、鮮明に浮かび上がってくる苦い情景が浜木の心を衝き動かす。
江戸時代初期、幕末、現代と、時代を縦横に行き来しながら、互いの歴史観、人物観をぶつけ合う2人の心理葛藤が読者をハイテンションの世界へと誘う。
哀愁に満ちたラストが出色の、歴史愛好家には必読の一書。
<目次>1 会津田島で発見された古文書2 幼馴染み3 家康の冷酷と秀忠の逡巡4 家康と側近本多父子の二重構造関係5 西行、そして「いろは歌」の謎6 苦い確執7 駆け引きと罠8 遠い情景




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