信さん(小学館文庫)
福岡・飯塚の炭坑町。
私の小学生時代、町で知らないものはいないひとりの悪童がいた。
その少年、信さんは、内向的で漫画を読むことが唯一の楽しみだった私を、ある日、いじめから助けてくれた。
直後、その場を偶然通りかかった私の母は、誰もが恐れる信さんに微笑みかけた。
その日から、信さんと私はいつも一緒だった。
昆虫の群れる樹木の在りかから、鉄人28号の似顔絵まで、信さんは様々なことを教えてくれる遊びの天才でもあった。
しかし、そんな日々も長くは続かなかった-。
人生という名の野っ原を全力で駈けた少年が、いた。
心に青く沁みる、名もなき魂の物語。
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