白銀の暗黒
読み応え十分の5つの中編ミステリーからなっている。
表題となった「白銀の暗黒」は、北アルプスの屏風岩で転落死した登山者のテントに、別の登山者の凍死体が発見されたことが事件の発端となった。
「潜伏」では、自分のミスから若い女性を死なせたことから責任をとって辞職した元刑事が、数十年後、死の予感の中で、迷宮入りとなったその事件に、鋭い推理を働かせる。
「弱味」は、6千万円を持ったまま行方不明になった不動産会社社長の行動を追ううちに、忌まわしい過去をあぶり出していく。
「岩尾根の告発」では、ピッケルを間違えてられた若者に悲劇が襲いかかる。
「雪の蝶」では、記憶喪失になった男が、蝶を描くことだけはできるということを知った長野県警豊科署の道原伝吉の見事な推理が冴え渡る。
「避難命令」では、雪山の小屋から署に犯人移送をはじめた伝吉たち刑事の危機を描く。
梓林太郎が、巧みで、力強いことをあらためて知らせている。
読後感は清涼だ
更新中です。しばらくお待ちください。