永臨侍郎橋
殺人。
その裏には強烈なドラマがある。
この殺人事件は太平洋戦争末期、昭和十六年に起きた。
場所はいまでは観光地として有名な中国広西省桂林の近くにある小さな町・永臨である。
町外れを小さな川が流れていて、そこに侍郎橋という名の石橋がかかっていた。
中国のむかしの行政機関である六部っでは、長官が「尚書」で次官が「侍郎」である。
このあたりに次官まで昇進した人がいたのであろうか盧溝橋に銃声がとどろいて、日本と中国が開戦した直後、上海の演劇人は、大同団結して『上海戯劇界救亡協会』を組織した。
協会に参加した抗日救国の『独立劇団』主宰者・周卓峰には若く輝かしい情熱の時代であった。
だが彼にとっては一つの拭えない汚点が永臨侍郎橋で起きた一人の女性をめぐる『独立劇団』員殺人事件であった。
事件は未解決のまま終戦をむかえた。
少人数ながらも『独立劇団』を率いて奔走した周卓峰は起伏のない人生の虜になってしまっていた。
だがマカオに旅をした周卓峰は事件解決のヒントを得て再びその強靱さを取り戻していた。
終局のどんでん返しで判明する犯人の悲劇的な肖像に著者・陳舜臣ミステリーの深い味わいが香る、歴史ミステリーの名作です。
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