旧い造り酒屋で銘酒『桜獅子』の醸造元・芦屋の桜井家は中国美術品のコレクターで、収集リスト『桜獅子名品帖』は桜井家の誇りでもあった。<br />だが、その『桜獅子名品帖』にも記されない逸品があるという。<br />それが中国版画の夜叉図と歓喜変である。<br />中国の版画は、清代から蘇州で栄えた。<br />版画は桜井家の隠居が若いとき、蘇州に遊行した折りに入手した心うつものという。<br />その物語は意外な展開をみせ、後日譚も控えていた。<br />