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愛を置き去りに

年老いた祖母の身を案じたエミリーは、久しぶりに祖母の住むベルヴォワ邸を訪れた。
十一年前の夏、まだ十九歳だった彼女は隣に住むルーカスに恋をし、眠っていた彼のベッドにもぐりこんで、夢うつつの相手と愛しあった。
だが当時医学生だったルーカスにはすでに婚約者がいて、彼は、生き方が違うからとエミリーを寝室から追い出した。
その後妊娠していることがわかり流産しても、エミリーは誰にも言わず、ひとりで苦しみを乗り越えてきた。
ルーカスはアフリカで医師として働いているはず……。
彼が最近妻を亡くして隣家に帰っていたとは知らなかった。
皮肉にもエミリーが着いた夜にベルヴォワ邸が火事になり、焼け出された祖母とエミリーが隣家の世話になろうとは。
ルーカスと同居する――考えただけでエミリーは頭がくらくらした。




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