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遅れ咲きの幼な妻

美しい、じつに美しい。
伯爵は思った。
それが我が妻とも気づかずに……。
「叔父さん、ぼくを猿と結婚させるなんてひどいよ!」紅顔の美少年が口にしたその言葉が、幼き花嫁ベスの心をえぐった。
訳もわからず父に手を引かれて祭壇に連れてこられただけなのに……。
少年の名はドルー。
将来、高貴な伯爵家の跡を継ぐ、若き花婿だ。
ベスは泣きながら結婚したくないと訴えたが、結局儀式は行われた。
しかし、まもなくしてドルーは妻を置いて去っていった。
歳月が過ぎ、ベスは外出先でばったり再会した――10年ぶりに、夫と。
誰もが振り返るその美貌は以前と変わらず、すぐに彼とわかった。
だがドルーのほうは、目の前にいるのが妻のベスとはわからぬ様子で、彼女のうなじに唇を寄せ、囁いた。
「美しい妖精さん、きみの名は?」■かつて幼な妻を猿と吐き捨てた夫のドルーと再会したベス。
花盛りを迎えた彼女を妻と思わず名を尋ねる夫に、彼女は「お教えするつもりはありません。
ご自分で探し出してください」と、その場を去ります。
ドルーは名残惜しさに思わず後をつけようとさえして……。
【旧タイトル: 十年目の蜜月】




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