よわむしコギツネゴンのちょうせん
走ってもジャンプしても、いつもいちばんびりのゴンは、友だちから『いつもいちばんびりの、びりびりびっけ、びりびっけ』と、あだ名で呼ばれていました。
ゴンは、びっけびっけとあだ名で呼ばれるのが、ほんとうは、とてもいやだったのですが『しかたがないや、ボクはなにをしても、いちばんびりの、びりびりの…びりだから』と、思っていました。
そんなある日のことでした。
ゴンは草原の王様、ライオンにおいかけられました。
にげ回るゴンの目の前に、とつぜん地球がパカーンとふたつに割れたような大きくて深い谷があらわれました。
谷の底にはからだがぜんぶ口みたいな怪獣がいて、谷におちたらさいご、ライオンでもゾウでもキリンでもペロッと一飲みにしてしまう、といわれていました。
「どうしよう…どうしよう…」 ゴンは谷を越える自信がありませんでした。
ゴンは谷を前にしてブルブルとふるえていましたが、ふっと、『おまえはね。
ほんとうはなんでもできるつよいコギツネなんだよ。
ただ、おまえができない。
できっこない。
と、じぶんで思っているだけなんだよ』と、いつかお母さんがいっていたことを思いだしました。
「よしっ!」 くちびるをギュッとむすんだゴンは、ゆうき、おもいきりゆうきをだして谷越に挑戦しました。
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