枯れ田んぼ
夫からの催促で熟年離婚に至った私は、友人夫婦の経営するパン工房で住み込みの見習いを始めた。
二人の息子は年子で大学生。
大学の寮の生活費は、夫との話し合いで夫が3分の2、私が3分の1の負担した。
幾年か過ぎて、見習いも卒業したころ、図書館で何気なく山野草の本を見ていたら、紀伊上臈杜鵑の花を見つけた。
昔学生で山岳部に居た頃、和歌山の親友が、この花の自慢をよくしていた。
絶滅種で断崖絶壁に垂れて咲く幻の花だとか。
私は、本物のこの花を見たくなった。
二人の息子が社会人になったのをきっかけに、私は和歌山のその花が見られる田舎に移り住んだ。
ところが其処は30年ほど時がタイムスリップしたような、昔の時代に生きる里だった。
その里で経験する、数々のカルチャーショック、私は此処で行きぬかねばならない。
猛烈なサバイバルが始まった。
美しい紀伊上臈の花に魅了され、稲刈りの終わった赤とんぼの舞う枯れ田んぼの風景に癒され、戦いながら、この里に居場所を見つけ、さらに前を向いて行く、お一人様の人生なのだ。
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